交通事故において主婦が請求できる損害賠償
1 主婦が請求できる交通事故の損害賠償の特徴
主婦が交通事故により負傷した場合、加害者(または加害者側の保険会社)に対して、治療費、通院交通費、休業損害、傷害慰謝料の他、後遺障害が認定されると、逸失利益、後遺症慰謝料を請求することができます。
交通事故の被害者が、事故にあった時、主婦、すなわち、同居の家族(配偶者や未成年の子ども)のために家事を担っている場合、上記の損害のうち、休業損害と逸失利益をどのように算定すべきかが問題となります。
2 主婦の休業損害
交通事故の被害者は、事故で負傷したために仕事を休み、収入が減った場合、その減収分を休業損害として請求することができます。
休業損害の計算方法は、「被害者の事故時の収入日額×休業日数」です。
ところが、主婦は、入院や通院、怪我の症状のために料理、掃除、洗濯、子どもの世話等をすることができなくても、収入が減るわけではありません。
そこで、自賠責保険会社は、主婦(家事従事者)の収入日額を6100円と定めています。
加害者が加入する任意保険会社も、通常、自賠責保険会社の基準に従います。
しかし、弁護士が交渉する場合、多くの裁判所の考え方に倣い、原則として、厚生労働省が毎年発表する賃金センサスの女性平均賃金(産業計、企業規模計、学歴計、全年齢平均の賃金額)を主婦の収入として算出します。
令和5年の賃金センサスの女性平均賃金は、399万6500円ですから、日額は、1万0949円(399万6500円÷365日)となります。
また、休業日数については、入院中に家事ができないことは明らかですが、通院中は、家族構成、傷害の内容や程度、治療内容、医師の就労に関する指示、治療期間、治療日数等を考慮して家事をすることができなかった日数を判断することになります。
3 主婦の逸失利益
交通事故による怪我の症状が残存して、後遺障害が認定されると、被害者は、事故前と同様に労働することができず、将来得られたはずの収入を失うことになるため、将来の減収分を逸失利益として請求することができます。
逸失利益の計算方法は、「被害者の事故時の年収×労働能力喪失率×労働能力喪失期間」です。
自賠責保険会社は、14級の場合は43万円、11級の場合は195万円等、認定した後遺障害等級ごとに、逸失利益の上限額を定めています。
しかし、弁護士が交渉する場合、原則として、休業損害と同様に賃金センサスの女性平均賃金(産業計、企業規模計、学歴、全年齢平均の賃金額)を主婦の年収として計算するため、通常、自賠責保険会社や任意保険会社の提示額より高額となります。